「彼女こそ…私のエリスなのだろうか…」
「──箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬(きかん)に手を加えて
驕れる無能な創造神(かみ)にでも 成った心算なの……」
... Love wishing to the "Ark"
崩壊 其れは孕み続けた季節 二月の雪の日 『妹』(Soror)の記憶(ゆめ)
「我々を楽園へ導ける箱舟は 哀れなる魂を大地から解き放つ
救いを求める貴女にArkを与えよう」
《Arkと呼ばれた物》(それ)は月光を受けて銀色に煌いた…
想い出まで裏切った 冷たい言葉の雨
幸せだった二人 永遠(とわ)に届かなくなる前に…
「ねぇ…何故変わってしまったの? あんなにも愛し合っていたのに」
涙を微笑みに換え詰め寄る 《Arkと呼ばれた物》(Knife)を握って…
──愛憎の箱舟(Ark)
「さぁ…楽園へ還りましょう、お兄様…」
因果 其れは手繰り寄せた糸 六月の雨の日 『兄』(Frater)の記憶(ゆめ)
信じてたその人に裏切られた少女
逃げ込んだ楽園は信仰という狂気
新しい世界へと羽ばたける自己暗示
澄み渡る覚醒は進行という凶器
最期の瞬間(とき)に廻った 歪な愛の記憶
脆弱な精神(こころ)が堪えきれず あの日嘘を吐いた…
律すれば律する程堕ちる 赦されぬ想いに灼かれながら
まぐわう傷は深く甘く 破滅へ誘う…
──背徳の箱舟(Ark)
「さぁ…楽園へ還りましょう、お兄様…」
被験体#1096 通称『妹』(Soror)同じく
被験体#1076 通称『兄』(Frater)を殺害
<症例番号(Case Number)12>
過剰投影型依存における袋小路の模型(Model)
即ち《虚妄型箱舟依存症候群》(Ark)
限りなく同一に近づける 追憶は狂気にも似た幻想
求める儘に唇を奪い合い 少しずつ楽園を追われてゆく
同じ心的外傷(Trauma)重ねれば響き合う けれどそれ以上には…
「──箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬(きかん)に手を加えて
驕れる無能な創造神(かみ)にでも 成った心算なの?」か…
在りし日に咲かせた花弁は 暗闇に散り逝くように凛と
少女の声色で囁く「楽園へ還りましょう」…
... Love wishing to the "Ark"
監視卿(Watcher)は天を仰ぎ深い溜息を吐く
失った筈の《左手の薬指》(場所)が虚しく疼いた
──ふと彼が監視鏡(Monitor)の向こうへ視線を戻すと
嗚呼…いつの間にか少女の背後には『仮面の男』が立っていた──