通り過ぎた遥かな灯が
落とした影に花は移ろい
乾いた風が 撫でた女の肌に
深い皺を刻む
嗚呼…朱い空を征く白い旅鳥よ
お前は【辿りつくべき場所】を
知っているのかい?
嗚呼…連れて行っておくれ
置いていかないで
声に出来ない声
遠ざかる≪風景≫(ひかり)に
手を伸ばした≪第九の現実≫(やみ)に
確かなものなど何ひとつ無く
逃げ込んだ儚い≪幻想≫(ゆめ)
舞い散る花びらの中
笑う貴方と私と二人の…
追憶に揺れる可憐なる
其の≪朽花≫に、
咲き誇るバラは永遠に届かない……
然れど…然れど…唯…一輪…
この世の…常ならざる…
薔薇がある!
冬枯れの世界を常春が如くに、
照らし賜う美は誰ぞ?
\其れぞ、我が女王陛下!!!/
わぁー、
粉挽き屋の旦那に聞いたんスけど、
うちの親方がモテなさ過ぎて、
とち狂って遂に女かどわかして来た
ってマジっスか?
……って、ヤッベ。マジだッ!?
(馬鹿野郎!)
おぉ、気が付いたかい?
アンタ、この水車小屋の近くの森で
倒れていたところをよ、ここに運び込んだのさ!
でスよねぇ~!
やぶ医者の奴の話では…
過労と栄養不足だろうってさ…
このままじゃ…危なかった…
だろうってさ…だが…
≪命の恩人≫(かれ)は笑って
何か取り出した
(俺は笑ってアレを取り出した)
あんた、本当にツイてたな。さぁ、
遠慮はいらねぇ。どんどん食えよ。
パンなら売るほどあるんだ!
って!
まぁ、パン屋っスからねぇ!
いい食べっぷりだなぁ、姉さん!
Tres bon!
ーーそんな経緯で…
一命を取り留めた私だったが…
ある心境の変化に戸惑い…
愕然とした後…
不思議と前向きに…
生まれ変わったような気持ちで…
暫し…パン屋さんおお仕事を…
手伝うことにしたのであった…
パン屋の朝は本気でヤバいぜッ!
鶏<(より)太陽<(より)早起きで
生地を
捏ねる→捏ねる→捏ねる→
寝るZzz…(寝るな!)
ウチのパンは生地がウマいぜッ!
麦の種類→粉の挽き方→水に至るまで
拘る→拘る→拘る→割る
風土の関係で我が国の小麦は
他国の様には
ふっくら膨らまないけど
外はパッリパリ中はモッチモチ
工夫次第じゃ
まだまだ美味くなる!?
ウチのパンで皆の腹をパンパンにしてやるぜッ!!!
焼き上げ時の指示はムズいぜッ!
長くても×(だめ)短くても×(だめ)
石窯と睨めっこ
様子見→様子見→様子見→炭?
口は悪いが腕は悪くない
顔も悪いがそれは
「放っとけよ!」
場所は帝都パリ美味さは論の勿
Boulangerie De Besson??
(親方の出べその看板が目印)
ウチのパンでお前の腹もパンパンにしてやるぜッ!!!
逢う方なき影 追う日々の
光を見失い
傷を負う程に 老う事に
疲れたのかも知れなかった……
倒れる以前の…私ならきっと…
這ってでも旅を…
続けたのでしょうね…
≪挫けそうな心を励ましてくれる存在≫(くちずさむうた)でもあれは違ったの?
薄情な女ね けれど…
人並みの≪幸福≫(しあわせ)を
願ってはいけませんか?
≪苦難≫(ふゆ)を乗り越え
咲くのが≪花の命≫(おんな)だもの
もし此れが借り物の≪物語≫(じんせい)だとしても
≪傍で愛してくれる人の笑顔≫(はるのひかり)を浴びて散りたい……